教員による児童生徒へのわいせつ事件の刑事裁判をめぐり、横浜市教育委員会は21日に会見を開き、多数の職員を動員して傍聴させていたと明らかにした。「被害者のプライバシーへの配慮が目的」としつつ、「一般の傍聴に支障が出たことは申し訳なく思っている。行き過ぎだった」と釈明。今後はこうした動員は行わないという。
市教委によると、動員は2019年5月に始まった。当時の教育長は了承していたという。同年度と23~24年度に横浜地裁で審理された4件の裁判が対象で、計11回の公判で職員に傍聴を呼びかけた。被告の教員が働いていた学校を所管する学校教育事務所の所長が業務命令として文書で発したという。
所管外の事務所や市教委事務局の職員らが動員されることもあり、23~24年度にはのべ371人の職員が呼びかけに応じた。出張旅費を支給したケースもあったという。
こうした対応をした理由について、市教委はいずれの裁判でも事件の被害者側から要請があったためだとし、「教員側を保護しようとの意図は全くない」と説明。各裁判で事前に傍聴席の数を把握し、1回あたり最大50人に呼びかけていた。文書には「関係者が集団で傍聴に行ったことがわからないように、裁判所前の待ち合わせは避けてください」「裁判所内での声かけはしないように」などと注意事項を記していたという。
今年5月7日に市民らから問い合わせがあり、市教委は対応を協議。今後は職員を動員しないよう、20日に関係部署へ通知したという。
21日の会見では、市教委事務局の幹部は法廷で一般の傍聴の機会が妨げられたことについて「申し訳ない」と陳謝。憲法の「裁判公開の原則」に違反するのではとの報道陣からの指摘に対して、別の幹部は「抵触しているかについて確認はできていない」と述べた。(堅島敢太郎、良永うめか)
■職員動員、記者も目撃…